QOLが低下する病気の知識 不安障害について

【不安障害とは?】原因の元をリハビリすることが改善への近道

皆さんは"不安障害"って何かご存じでしょうか?

「あんなことになったらどうしよう。。」「ああは言ったものの本当に大丈夫だろうか。。」といったような不安という気持ちは誰にでも持ち合わせているものです。

ですが不安障害になると、この気持ちの強さや頻度が普通の人から見たら異常なぐらい大きなものになってしまい、身体にまで影響を及ぼすことになります。

前回「心身症とは何か?」について記事にしましたが、ここでも記載している通りで私の中での不安障害というのは心(精神的)に何かしらの問題を抱えてしまうことで身体に症状が表われるといった心身症と同じ部類だと考えておりますので、ここでは不安障害を心身症の中の一つの病気というカテゴリーとさせていただいてます。

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ですが医療業界では不安障害と心身症は別の見方をしているので、こちらの記事は不安障害や心身症を経験した私の個人的主観であるものとして目を通していただけますと幸いです。

こういった病気というのは病院に通って処方される治療薬だけでは治りにくいと感じている患者さんが多いのが現状であることから、病院だけに頼るのではなく自分で出来ることも実施していくことで回復するスピードも早くなっていくと考えています。

今回は代表的な不安障害の症状や特徴、なぜ治りにくいのかを理解していただき、どうやって自分自身でも可能な限り改善に貢献していくことができるかについてお話してしていきますね。

 

 



 

不安障害の種類

 

今回は特定の状況や物に対して恐怖心や不安を感じる代表的な不安障害を取り上げています。

私の中で不安障害を心身症の中の一つとしていることから、前回の心身症の記事を読んでいただいた人にはご紹介した病名と一部重複しているものがありますがご容赦ください。

 

パニック障害

パニック障害はある特定の場所に行くと、酷い場合に「もしかして死んでしまうのではないか」という不安や恐怖心から動悸やめまい、吐き気、手足の震えなどが突然起こる病気です。

特に閉鎖された空間や人の多い場所へ行った際に症状が現われる場合が多いため、外に出ることが恐怖になりやすくなります。

このように外へ出ることが億劫になってしまうと、行ける場所が減ってしまうことで日常生活の行動が制限されてしまうのでQOL(生活の質)の低下が避けられません。

発症するキッカケは、仕事などで休まる間もない状態が続いた状態で極度の恐怖心や緊張感を感じる場合が多いようです。

 

会食恐怖症

会食恐怖症は外食時に誰かと一緒に食事をすると食事が喉を通らない、また吐き気がしてきてまともに食事を取ることができない病気です。

この病気になってしまうと誰かと外食することが困難になることから、会社のランチでは常に一人で食事をしたりプライベートでも友人たちとランチや飲み会を避けるようになるので、人付き合いが難しくなり周りの人と疎遠になりやすくなってしまいます。

発症のキッカケは、幼少期に学校の先生から給食を「早く食べなさい!」と急かされたり、「残さずに全部食べないとダメだよ!」と完食を強要されるケースである場合が多いようです。

とにかく一度発症してしまうと、家族や親しい友人以外の人と一緒に食事に行くことにおいては楽しいよりも試練になってしまうような病気です。

 

嘔吐恐怖症

嘔吐恐怖症は"吐く"という行為において異常なまでに抵抗がある病気です。

この病気になると自分が吐く行為だけではなく他人が吐く行為を見るのも拒否するような状態になり、動悸や吐き気といったパニック障害に近い症状が表われます。

「吐くぐらいなら死んだ方がマシ!」と言われる人もいらっしゃるぐらいです。

こちらも過去に吐いてしまったことで苦しい思いをしたことや周りの人の吐いている姿を見てしまった、また自分が公共の場で吐いてしまったことで恥をかいてしまった等がキッカケとなって発症することが多いとされています。

したがって嘔吐恐怖症の人は吐くこと自体が異常なまでに抵抗が強く、幼少期以降は何十年も吐いていないといった人も珍しくありません。

この病気が重篤化してしまうと、食べることすら拒否してしまう摂食障害のような病気を併発してしまう可能性があります。

 

強迫性障害

強迫性障害は誰にでもあるような日常の確認事項に対して異常なまでの恐怖心や不安を抱いてしまう病気です。

例えば、家を出る時に「火ってちゃんと消したかな?」「水道ってちゃんと止めたかな?」、また家を出た後も「さっき家の鍵ってしっかり掛けたっけ?掛け忘れたかもしれない。。」というのは誰にでもあって少し多いぐらいなら神経質で済む話ですが、強迫性障害になると過度に何回も確認したり外出している最中にも「本当に大丈夫かな??もし泥棒に入られてたり火事になっていたりしたら怖いな。。」と不安な気持ちが消えない状態になります。

発症のキッカケはあまり明確にされていませんが、私個人の経験から推測すると、幼少期に親や先生から「○○しておかないと後で恐ろしいことが起こるよ!」とオーバーな教育をされたり、社会人になってからは「○○の件はちゃんと確認したの!?あなたが確認を怠ったら皆に迷惑が掛かるでしょ!」と怒られたりしたことがトラウマとなって発症する可能性が高いのではないかと考えてします。

まるで発症の原因となった人物から常に確認することを見えないどこかで脅迫されているような感覚で、"脅迫性障害"と言い換えても問題ないかもしれません。

この病気になると確認事項を何度も時間を掛けて実施するために時間のロスにも繋がりますし、どこにいてもその事が気になって他の事に集中できない等、日常生活において支障が出てしまうことになります。

 

外傷後ストレス障害(PTSD)

PTSDは過去の日常生活において親から虐待を受けたり学校でイジメに遭ったりした場合や自然災害による大きな地震や津波などで多大な被害を受けた等の大きなショックを受けたといった場合に、それが強烈なトラウマとなることがキッカケで発症する病気です。

症状としては普通であれば大したことでないようなことでも怒ったり驚いたり、また涙が出たり落ち着きのない行動が見られるようになります。

そして、トラウマのキッカケとなる物事に触れると"フラッシュバック"といって当時の記憶が鮮明に蘇ることがあるため、上記の症状に加えて悪夢を見たり眠れなくなったりする状態になってしまうのです。

他の不安障害と比較してもPTSDはかなりショッキングなことがトラウマとして残るため、治療においてはかなりの時間を要するものだと考えられます。

 

社会不安障害(対人恐怖症)

社会不安障害は仲の良い友人や家族の前であれば問題ないですが、それ以外の人前に出ると極度の緊張や恐怖心から震えが止まらなくなってしまったり言葉がどもってしまったり、更には全く喋れなくなってしまう病気です。

人前で緊張してしまうことを"あがる"と言いますので"あがり症"と呼ばれたり、人と喋ることに対して恐怖心を抱いて避けてしまうことから"対人恐怖症"とも呼ばれています。

学生時代であれば自分の心を許した相手だけであれば話をすることもできますが、社会に出ると嫌な人とでも関わっていかなければならないため避けては通れないことから、組織のような人と関わらざるを得ない場所に行くことが難しくなってきて日常生活に支障をきたしてしまうのです。

発症のキッカケとしては、過去に自分が何か行動した際に人前で恥ずかしい経験をしたことがトラウマとなってしまっている可能性が大きいとされています。

 

HSP

HSPは視覚や聴覚が周りの人と比べて敏感で感受性が豊かであるが故、周りの環境に対して人間関係や音や光などを含めて様々なことを気にし過ぎてしまうものです。

HSPは病気というよりかは本人の気質に近いものがありますが、かなり敏感なことから色々と気にし過ぎることで日常生活において「生きずらい」と感じるといったQOLが下がる可能性を持っているので、不安障害の一種として見なしています。

HSPの人は「相手の感情に共感する」「物事を深く考える」といった気質を持っているのが特徴なので疲れやすくもありますが、反対に時と場合によっては非常にメリットとして働くことがあるのです。

医療業界では先天的に持っている気質により治らないという見方をされていますが、私のように機能性ディスペプシアという心身症を発症したことがキッカケで常に緊張感を持った状態により周りへの感覚に対して異常に敏感になりHSP気質へ変化した後天的なパターンもあり得るので、この場合は治る可能性があるのではないかと考えています。

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分離不安障害

分離不安障害はほとんどが幼少期に発症して成人する頃には自然と治っていることが普通とされている病気ですが、成人でも1%の割合で症状が治らない病気です。

どのような障害かと言いますと、身近にいる家族や恋人が自分の前からいなくなることにおいて異常なまでの不安を覚えるもので、その対象の人が立ち去ろうとすることを必死になって止めるような行動をします。

そしてその人がいなくなってしまった場合は頭痛や腹痛、また不眠や悪夢を見るようになってしまうのでQOLの低下に繋がっていくのです。

幼少期であれば普通は親が出て行ったとしてもそれは買い物や近所に行くだけのこととで自分の元へ帰ってくることが当たり前なのですが、成人して恋人が出来たりすると元は他人ということもあり自分の元へ戻ってこなくなる可能性もあるので依存心の強さが関係していると思われます。

 

限局性恐怖症

限局性恐怖症は特定の物や状況において極度の不安や恐怖を感じる病気です。

動物や昆虫、場所、自然、怪我、疾患(伝染病)といった中で一つでも見ることが出来なかったり体験することが異常に恐怖を覚える場合は限局性恐怖症に当てはまると言われています。

場所は次にご紹介する広場恐怖症と似ていますが、限局性恐怖症の場合は高いところや閉じ込められた空間のような限定された場所のことを指すようです。

こちらは一般的に"高所恐怖症""閉所恐怖症"とも呼ばれています。

症状としては広場恐怖症と共にパニック障害と同じ症状が出るので、こちらの症状が酷くなると外に出るのが怖くなって家に引きこもるようになってしまうといった社会でまともに生活することが難しい状態になってしまいます。

 

広場恐怖症

広場恐怖症は限局性恐怖症とよく似ていますが、決定的に違うのは恐怖や不安を抱く対象が「容易に逃げる方法がなく、誰にも助けを得られない可能性がある状況や場所」であることです。

具体的には、公共交通機関や公園のような広い場所、映画館など囲まれた場所、列や人混みに囲まれている、家で一人でいるという状況化の中で二つ以上当てはまる人を広場恐怖症と定めています。

ただ広場恐怖症の場合は必ずしもパニック発作を起こすだけでなく、対象の場所を避けようとするだけでも病気として認定されるようです。

 

全てのことに対して常に不安を抱いているのは全般性不安障害(GAD)と呼ばれています。

 

なぜ不安障害は完治が難しいのか?

 

ここまでご紹介したように、全ての不安障害に関しては心身症の中でもトラウマが原因による要素が特に強いものです。

他の心身症でも似ている部分がありますが、神経に対して指令を送る脳に対してオーバーワークや人間関係によって異常が起こってしまい発症するので、薬による治療だけでは症状が大きく改善することが難しいのだと思われます。

特にトラウマによる場合は「脳裏に焼き付く」という言葉通り、一度取り憑いたら簡単には離れないのでしょう。

心身症や不安障害で使用される薬というのは、ウイルスや腫瘍といった目に見えるものが原因で掛かる病気のようにウイルスを殺したりや腫瘍を抑えることが出来るものと違って、症状を一時的に抑えるに過ぎないものだと考えています。

なぜなら、もし病状を改善できる薬であるのだとすれば病院に通っていて処方薬を服用しているだけで不安障害が治っているはずですが、現実は不安障害が大きく改善せずに悩まされている人が非常にたくさんいるからです。

そういった理論でいくと、薬だけに頼って寛解(※全治とまでは言えないが、病状が治まっておだやかである状態)を目指すことは非常に難しいものだと言っても過言ではないでしょう。

 



 

自分で取り組む不安障害の改善策

 

薬だけに頼るのは寛解が難しいとお伝えしましたが、ではどうすればいいのでしょうか?

それには、トラウマの元になっている原因を見つけ出すことだと考えています。

原因を見つけることが出来る場合と出来ない場合によって2つの方法を私が実践したものも含めてご紹介しますね。

 

注意!

PTSDのような強烈なトラウマの場合は自身で原因を追及すること自体が非常に危険を伴う場合がありますので、掛かり付けの医師と相談してから実践するようにしてください。

 

原因が分かっていれば徹底的にリハビリに取り組む

まず不安障害が発症した状況をゆっくりで良いですので、それが具体化するまで思い出してみてください。

もし思い出すことが出来れば、それがトラウマであり不安障害になっている根本の原因である可能性があります。

その根本の原因を克服できるように徐々に"リハビリ"をしていくのです。

私の経験から具体的に説明させていただきますと、私の場合は重傷まではいっていないですがいくつか抱えている不安障害の一つとして強迫性障害があり、この症状が原因で以前までは日常生活において支障をきたしていました。

とにかく家を出る際には鍵を掛けたかどうかや火の元は消えているかどうかを何回も確認して、少し歩いたら不安になってまた戻って確認するといったおかげで会社や待ち合わせに遅刻しそうなことが何度もありました。

また、料理した後の熱い状態のクッキングシートをゴミ箱に捨てた場合に後になって「放っておいたら引火して家事になるんじゃないか」とか、生肉を触った手で他の食器を触ってしまった時に「この器でご飯を食べたら食中毒になるじゃないか」となって何回も食器を洗ったりと明らかに普通の神経質を超えた行為でした。

人から「それは病気だよ」と言われたこともあって「このままではまずい!」と自覚したことで自分で克服することにしたのですが、その際にこれだけ神経質になってしまったのには何が原因だったのかと何日も掛けて思い出してみたのです。

そこで見えてきたのが、"幼少期に親から躾(しつけ)として厳しく教えられてきた"ことだったのです。

躾という意味では非常に厳しい親であったこともあり、幼少期は親の言うことが絶対だと思っていた時期があったことから、「もし○○をしたら、こんな怖いことが起こるから止めなさい!」と言われ続けてきたのが私の心のどこかで恐怖心として植え付けられて、一つのトラウマになっていることが分かりました。

これが原因で、悪いことに関しては何に対しても常にオーバーな想像をしてしまうようになってしまったのです。

もちろん親が悪いわけではなく、私自身が真面目な性格だったことで捉え方が普通の人と比べてオーバーになってしまっていたのでしょう。

私自身は早くに親の元を離れて暮らしていましたし親離れも早い方でしたが、それでも頭のどこかに「幼少期に親に教えられたことは絶対に聞かなければならない!」というのがあったのです。

そこで私は「もう社会人になって一人立ちしているのだから、自分が判断して正しいと思うものだけを残して残りは捨てよう!」と決断し、たくさんの人から話を聞いたり行動を観察しすることで自分が如何に異常な行動をしていたかを理解するようにしました。

そして結婚している現在では妻が良い意味で神経質では無かったため、家庭内で一番のリハビリを実施することができています。

最初は理解できないことも多くてケンカもありましたが、やはり外の世界を見ても私の方が異常だと理解していたので徐々に妻の感覚に寄せていくことが可能となったのです。

今では悪いケースも以前ほど想像しなくなり、鍵や火の元のような確認事項をチェックする回数を減らすということに成功しました。

皆さんも現在抱えている不安障害が非常に大きなトラウマでなければ、私のような方法で一部の不安障害を克服できるかもしれません。

 

原因が特定できない場合はカウンセリングを受ける

上記の方法で原因の特定ができない、または薄々分かっているけどあまりにも辛い過去であることから自分からフタをしている状態であれば、掛かり付けの医師に許可を取る必要がありますがカウンセリングを受けるという方法もあります。

カウンセラーは同じような病気を抱えていた人がほとんどなので、患者さんの苦しんでいる気持ちを理解してくれる一番近い人でしょう。

カウンセリングで自分の原因を引き出してくれる可能性が高いんはもちろんのことですが、リファーといって実際に患者さんの症状を見た時に適切な病院を紹介してくれるのも仕事なので、今通っている病院では改善する気配がない、また自分で原因を特定できずに改善方法が分からないといった際に有効な手段の一つだと言えます。

改めて言いますが、カウンセリングは単独で受けることはできませんので掛かり付けの医師に相談してから受けるようにしてくださいね。

 

最後に

医学は日進月歩で今まで治らなかった病気も治る時代になってきていますが、不安障害を含めた心身症のような病気は目に見えないものであるためか、残念ながら簡単に改善できるような特効薬は開発されていません。

ですが私は重傷化までしてなかったことも幸いしてか、一部の不安障害をご紹介したような方法で乗り越えることが出来ております。

病院だけでどうにもならない場合は、出来る範囲で良いので自分で行動を起こして様々な方法を試して治そうとする強い意思も時には必要なのかもしれません。

「なぜなら自分の身体は自分自身が一番理解しているはずですから。」

 

ではまたお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

ワナビー松本

機能性ディスペプシアを筆頭にうつ病や不安障害も患った経験から現在は心理カウンセラーとして活動中。

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